- 2008年7月19日〜20日 北海道大学対東北大学庭球定期戦(男子:第78回、女子:第40回) 北海道大学テニスコート
- 伝統の定期戦、今年の舞台は北海道大学テニスコートだった。曇り空とあって真夏にもかかわらず涼しいぐらいだった。北海道大学のOB・OG(楡庭会)はこの日に合わせた総会があるため、大勢のOB・OGが応援に駆けつけた。萩庭会からは本部の小山会長、太田監事、滝口と東北支部の樋渡幹事長、千田副支部長の5人が応援に馳せ参じた。去年は東北大学が男子9−0、女子5−0と完勝したため、北海道大学は今年こその意気に燃えている。
-
- 初日のダブルスで男子No.3は5時間を大幅に越える死闘を演じ、北大が劇的な勝利を納めた。北大の現役は勿論、OB・OG側からも歓喜の声が沸きあがった。去年が完敗だっただけに待ちわびた1勝であろう。しかし東北大はNo.1とNo.2がしっかり勝利を納め2対1とリードした。一方、女子はNo.1、No.2とも競った試合を落とし0対2と苦境に立たされた。ダブルスに続きシングルスが入る。男子はまずNo.2とNo.4が危なげない勝利を納めた。次いで入ったNo.5は6−0、4−0と快調に飛ばす。No.6も6−3で1セットアップし日没順延となる。4対1ながら勝利は目前の状態で初日を終えた。女子シングルスNo.3は2年生ながら落着いたプレーで6−1、4−1と相手を圧倒した状態で日没順延となり、明日に望みを繋いだ。
-
- 2日目は男子シングルスのNo.5がその後も0行進を続け、6−0、6−0、6−0で勝利を納め東北大の勝利が確定した。残りのシングルスも粘る北大を突き放し結局1セットも落とさず完勝した。男子は8対1と会心の勝利だった。一方、女子シングルスはNo.3が相変わらず落着いたプレーで6−1、6−1で勝利を納め、逆転勝利への可能性を残した。No.2もその勢いを借りて6−3、5−2と勝利が見えてきたところで北大戦に住む魔物が現れ、マッチポイントを握ることなく逆転され女子の3連覇はならなかった。No.1の試合は全体の勝敗を象徴するような試合になり相手の伸び伸びプレーの前に屈した。結果1対4でまさかの敗戦となった。
-
|
|
|
男子 |
|
|
|
|
|
|
女子 |
|
|
|
|
東北大 |
8対1 |
北大 |
|
|
|
|
東北大 |
1対4 |
北大 |
|
D1 |
○ |
仙石俊平4
渡部敬徳4 |
6−1
6−0
6−2 |
石原 暢3
野呂隆昌3 |
× |
|
D1 |
× |
樋口 愛4
熊谷明日香4 |
2−6
7−6(4)
4−6 |
安藤恵理子3
小川美雪3 |
○ |
D2 |
○ |
水戸惟史4
堀田竜士4 |
6−0
3−6
7−5
6−0 |
東 亮佑3
石田和也3 |
× |
|
D2 |
× |
樋口小夜子4
酒井 遥4 |
(5)6−7
(4)6−7 |
堂腰美紀4
内田有吏子2 |
○ |
D3 |
× |
田中敦之3
遠藤武蔵3 |
3−6
6−1
6−2
3−6
11−13 |
丸山豪斗4
小橋洋太2 |
○ |
|
|
|
|
|
|
|
S1 |
○ |
仙石俊平4 |
6−2
6−3
6−0 |
東 亮佑3 |
× |
|
S1 |
× |
熊谷明日香4 |
2−6
5−7 |
安藤恵理子3 |
○ |
S2 |
○ |
水戸惟士4 |
6−2
6−2
6−3 |
加藤 聖3 |
× |
|
S2 |
× |
樋口 愛4 |
6−3
(3)6−7
2−6 |
内田有吏子2 |
○ |
S3 |
○ |
渡部敬徳4 |
6−1
6−1
6−1 |
石原 暢3 |
× |
|
S3 |
○ |
小原ゆみ2 |
6−1
6−1 |
堂腰美紀4 |
× |
S4 |
○ |
我妻祐宇2 |
6−4
6−2
6−0 |
矢内穂高4 |
× |
|
|
|
|
|
|
|
S5 |
○ |
田中敦之3 |
6−0
6−0
6−0 |
中西一洋3 |
× |
|
|
|
|
|
|
|
S6 |
○ |
和田大樹4 |
6−3
6−1
6−1 |
野呂隆昌3 |
× |
|
|
|
|
|
|
|
- 小山、太田、滝口の3人は羽田発7時25分の便で北大戦の応援に向った。新千歳空港から北海道大学のテニスコートに直行する。10時半少し前に北海道大学構内に入る。大きな樹木が構内のいたるところに配置され緑ゆたかな葉を生い茂らせている。まるで公園のようである。静かな構内をしばらく歩くと例の士気を高めるための声出しの歓声が聞こえてくる。コートに着くとそこは異様な雰囲気に包まれている。北大の応援に本物の応援団が加わり時ならぬ鯉のぼりまで打ち振られていた。
- 男子ダブルスNo.2とNo,3及び女子ダブルスNo.2が試合を行っていた。どこから応援しようかとスコアを見ると女子ダブルスが第1セットのタイブレークに入っていた。ここは大事な場面なので女子の試合を見守った。後で考えるとこのゲームが女子全体の試合を大きく左右したことになるがこの時点では知る由もなかった。タイブレークも一進一退で両チームともリードすると硬くなる。結局、北大がタイブレークを7−5で取った。第2セットは終始北大がリードし東北大は苦しい状況が続いたが諦めずに食い下がった。4年生ながら初出場の酒井が苦しい中でも笑顔を忘れずペアが落ち込むのを緩和していた。一方リードする立場の樋口(小)は負けてはいけないプレッシャーと戦っているのが見ていても伝わってきた。第2セットも再びタイブレークにもつれ込んだ。昨年、1年生ながら出場した北大の内田選手の進境いちじるしく、強烈なスマッシュが東北大の気迫を上回った。またもタイブレークを4−7で落とし涙を呑んだ。
-
- 男子ダブルスは第1セットを落としたNo.3が本来の力を取り戻し第2、第3セットを連取する。一方、No.2は第1セットを6−0と簡単に取ったのが心の油断を生み、プレーが少し雑になってきた。北大は開き直ってのストロークが面白いように入り、ガッツポーズや大声が響くようになった。まさかと思っている間に第2セットは3−6で落としてしまった。第3セットに入っても北大の意気盛んで一歩も引き下がらない好勝負となった。第3セットを7−5で取ったところで勝負あった。第4セットは実力に勝る水戸、堀田の強烈なストロークが炸裂し6−0で締めくくった。しかし、第2セットを落としたのはどこか心に隙ができたものと思われる。今後の課題であろう。
- No.2が試合を終わらせている間に、No.3はとんでもない展開になっていた。折角、優位に立った第4セットを北大が盛り返しと言うか、東北大が力ずくでポイントを取ろうとして相手のブロックに自滅する形が増えていた。ついにファイナルセットにもつれ込んでしまった。ファイナルセットは折角リードした方が力が入りすぎゲームを落とす状態が両チームに続いた。どちらが勝つか分からないまま5時間を越えてしまった。その間に後から入ったダブルスNo.1は試合を終えていた。ゲームジュースに入ってからは東北大が何度かチャンスをつかんだが、その度に追いつかれついに根負けし11−13で敗れた。北大ベンチ及びOB・OG席はまるで全体が勝利したかのような喜びの声があがった。「これだけでも応援に来た甲斐があったよ。」、ある北大OBの声が印象的だった。東北大は実力的には勝っているように思えたが力ずくでポイントを取ろうとするため攻めが単調になっていた。また、遠藤選手はサービスゲームを確実にキープすることを目指してほしい。そういった意味でNo.1のダブルスはよいお手本になるだろう。仙石、渡部両選手とも緩急自在でトップスピンにスライス、ロブにドロップショットを実にうまく使い分け相手を翻弄していた。
-
- 女子ダブルスNo.1はNo.2が惜しい試合を落としたショックを引きずり、第1セットは精彩を欠いた。第2セットも相手にリードを許し苦しい状態が続いた。4−5とマッチゲームを握られてから樋口愛の必死の粘りと熊谷のネットプレーで追いつき、またもタイブレークになる。ここは東北大の経験がものを言い、セットオールに持ち込んだ。ファイナルセットは勝たなければならない思いの東北大と名実ともにNo.1に成長した北大の安藤選手の思い切ったプレーが次第に明暗をはっきりさせる。ずっと苦しい試合を強いられてきた東北大に開き直るチャンスはやってこなかった。1年生から出場している北大安藤選手にとって嬉しい初勝利となった。これで東北大女子はひとつも落とせない苦境に立たされた。
- ダブルスが終了しシングルスに入る。男子はNo.2とNo.4が先に入った。初出場の我妻は出だしこそ緊張していたが、次第に雰囲気に慣れてきた。相手は北大主将の矢内選手だったが臆することなく、切れ味の鋭いサービスと回り込んで打つフォアハンドのトップスピンは相手を走らせ反撃のチャンスを与えない。調子を上げてきた我妻にさすがの矢内選手も打つ手を失ってしまった。No.2の水戸は終始冷静に試合を進めた。相手の加藤選手は粘り強く少しでも隙ができると巧みにそこをついてくる。油断はできないが水戸は慌てることなく、着実にポイントを重ねストレート勝ちを納めた。水戸選手の礼儀正しさと内に秘めた闘志は是非後輩も見習ってほしい。男子は引き続きNo.5とNo.6が入った。2人とも北大戦は初出場だが田中は既にダブルスで5時間を越す試合を行い雰囲気には慣れている。ダブルスの雪辱を期して立ち上がりから1球1球、膝・腰を落とし丁寧な試合を行う。相手の中西選手も力強いストロークで対抗する。長いラリーが何度も繰り返された。サービス力の違いとネットでの決め手を持つ田中が最終的にゲームを支配する。6−0、4−0とリードした時点で日没となった。和田は第1セットは相手の気迫に押され気味だったが、次第に雰囲気に慣れ気合が入ってきた。第1セットを取った時点で日没順延となった。
-
- 女子No.3の小原は2年生初出場ながら雰囲気に呑まれることなく淡々と自分のテニスを展開する。それ程切れのよいトップスピンではないが相手コート深く落ちるストロークが効果的である。相手の動きをよく見てのコース配分は見事。とても2年生とは思えない落ち着いたプレーだった。6−1、4−1とリードしたところで日没順延となった。
-
ダブルスNo.2水戸・堀田組 ダブルスNo.3のスコアボード
- 二日目は9時試合開始。昨日サスペンドになったシングルス3試合が入る。女子No.3は残り2ゲームをあっさり連取し早々と勝利を決めた。これで逆転勝利への可能性を残し、残り2試合に夢を繋いだ。
-
- 男子のNo.5は昨日の勢いを持続しなんと6−0、6−0、6−0の快記録を達成した。後の世代の人がこの記録だけを見たら余程一方的な試合だったろうと思うかも知れないが、中身は互角に近いラリーの応酬で見ごたえのある試合だったことをここに記しておきたい。【80年史を紐解いてみたが6−0、6−0、6−0という記録は長い歴史の中で唯一(?)第26回大会でNo.4の今野選手とNo.5の岡田選手が同時に達成しているだけであった。】 No.6の和田選手も昨日の勢いは留まることなく第2セット、第3セットを6−1、6−1で取りストレート勝ちを納めた。
-
- 続いて男子はNo.1とNo.3が入る。仙石、渡部両選手とも東北大が誇るトッププレーヤーである。渡部は豪快なサ−ビスで相手を圧倒したかと思うと、追い込まれてからのスライスショットで凌ぐなど緩急自在のプレーは見ていて安心できる。仙石はやわらかいテニスで相手コートの空いたスペースにボールを送るプレースメントは実に芸術的である。相手の東選手も石原選手も好選手であるが充実しきっているこの2人に対抗するには力が及ばなかった。男子はシングルスで1セットも落とさず6対0と完勝する。
-
- 女子No.2の樋口愛は主将の重責もあり緊張した立上がりだったがうまく相手のミスを誘い第1セットを6−3で取った。第2セットも相手の攻撃をかわし5−2と勝利まであと1ゲームと迫った。早く勝利に持ち込みたい気持ちが焦りを誘発し無理に攻めてミスを冒したり、チャンスに守りに入ったりチグハグな展開になる。自分の得意とするトップスピンの深いボールが影を潜め、繋ぎのロブが多くなった。相手はスライスショットで樋口のバックを攻める作戦が功を奏しはじめる。苦しくなった樋口はドロップショットで相手を揺さぶるが、逆に自分を追い詰めてしまったようだ。結局、タイブレークに持ち込まれてしまう。相手の内田選手の足は衰えず、むしろ前半より動きがよくなっていた。ファイナルセットに入り樋口に開き直る余力は残っていなかった。ついに女子は北大の勝利が確定した。泣いて喜ぶ北大ベンチと声もない東北大ベンチは対照的だった。樋口主将の悔しい胸の内は察するに余りあった。ドロップショットは奇襲戦法として使うといずれ破綻する時が来る。相手を追い込んで止めをさすつもりなら有効に作用する。毒にもなれば薬にもなることを肝に銘じてほしい。
-
- 敗戦が決定したあとのNo.1の試合はそれを象徴し北大の安藤選手の切れの良いサービスとストロークが伸びやか、一方落胆した熊谷は防戦に追いやられた。第1セットを失ってから熊谷は意地を取り戻し好試合となったが、最後まで伸び伸びプレーをした安藤選手が有終の美を飾った。男女とも素晴らしい試合を展開してくれ、私達OB・OGにとって大変感動的な二日間だった。また、大会出場を目指して単複とも次点だった野村主務をはじめ、惜しくも出場できず応援に回った選手、あるいは応援に徹してくれた部員各位の蔭の力にも感謝したい。
-
-
応援に駆けつけた太田元夫さん、小山小次郎さん 楡庭会と試合後の歓談
- 全試合終了後、男女別々に結果報告とお互いの健闘をたたえるエールの交換が行われた。最後は上田北大庭球部長から優勝カップの授与が行われ、閉会の辞で熱き戦いの幕を閉じた。現役のレセプションが始まるまでかなり間があったので、急遽コート脇に懇親の場が作られた。北大OB・OGと東北大OBがテーブルを囲むと俄か作りとは思えない立派な懇親会場になった。はじめに、新しく楡庭会会長に就任された能勢さんから挨拶があった。「今回は男子は東北大、女子は北大が勝ち1勝1敗でした。」のスピーチにどっと笑いが起こった。北大の大学院生OB・OGも加わり新旧の交流も行われた。全員が自己紹介をした後、今回の試合の感想や昔話に花が咲いた。主な話題として応援のあり方について賛否両論が出た。特にコートチェンジの時間は精神集中すべき時なのに大声でのエールはその妨げにならないのかが議論された。また、サービスの前のボールを地面に弾ませる動作が必要以上に長い選手が数人見受けられた。あまりにも長い前動作は逆効果ではないかの意見が大半を占めた。懇親会参加者20名(北大:中嶋前部長、上田部長、能勢会長、安川幹事長、横山監督、下野さん、武内さん、久保田さん、安達さん、高邑さん、高田さん、..東北大:樋渡さん、千田さん、太田さん、小山さん、滝口)
- 三日目は北大コートで楡庭会・萩庭会懇親テニスが行われた。とは言っても萩庭会からの参加は太田さんと滝口の2人だけだったが。朝早くから能勢会長自らコート整備をして私達の到着を待っていてくれる。既に岡さんと安達さんが練習を行っており私達は4番目の到着であった。少し練習してから岡・安達組とゲームを行った。私達がゲームを行っている間に続々とメンバーが集まってきた。早く来た恩恵で2セット行い、セットオールで上品にまとまった。全部で27名もの人が集まり盛大な懇親テニス会になった。私達に色々と気を遣っていただき往年の名手中嶋・能勢組や同期の安川・岡組と試合をさせていただいた。ご婦人方も数名参加され華やいだ雰囲気になる。帰りのフライトの都合で2時に上がり楡庭会の皆さんにお別れの挨拶をしているところに昭和61年東北大卆で現在札幌に在住している太田裕之さんが到着した。残念ながらすれ違いになってしまったが「また会いましょう。」と約束をして北大のコートを後にした。(滝口記)
- 追記:その後、山本三郎さんの調べで”男子シングルス5セットマッチの全試合ストレート勝ち”は長い北大戦史上で初の快挙であることが判明しました。